ホンダ S600

当時のF1が垣間見える、
走りのホンダが生み出した名車

update : 2016.10.18

父親に乗ってほしかった1台

名名車にまつわるオーナーの想いや素敵な繋がりを中心に紹介するコラム「LOVING THE CLASSICS」。第5回目は、1965年型のホンダS600を取材しました。ホンダがS500の後継車として1964年に発売したスポーツカーで、1966年にはホンダS800へと発展していきます。

オーナーの樋口さんは、三重県でお父様と一緒に板金業を営まれています。ホンダS600を手に入れるきっかけは、お父様が工場の看板に、ホンダS800の絵を入れたいと言い出したことでした。お父様がホンダS800の素晴らしさを熱く話すのを聞き、「そんなに好きなクルマがあったのか」と、驚いたそうです。それから旧車に興味がなかった樋口さんは、名車ホンダスポーツに興味を持つようになります。それと共に、「自分は好きなクルマのカスタムを自由にさせてもらっているのに、父親は仕事一筋で、はたして本当に乗りたいクルマに乗れているのか」と考えるようになりました。程なく、父親と一緒に乗ろうと、ホンダS800の前のモデルである、ホンダS600を手に入れます。

当時の技術を尽くして、考え抜かれて作られたクルマ

人生初の旧車、ホンダS600をメンテナンスしながら感じたのは、いかに考え抜かれて作られたクルマかということ。9,500回転まで回る超高回転型のエンジンや、チェーンで後輪を駆動するという独特なメカニズムやこだわりは、現代のクルマには見ることができないものでした。「二輪車からスタートし、レースの世界で成功したのち、F1に参戦を果たしたホンダというメーカーの個性が、いろいろな部分で強く感じられるクルマですね」と樋口さんは語ります。そして樋口さんのこだわりは、ホンダS600を必要以上に美しく再生せず、味がある部分は出来るだけオリジナルで残していくことだそうです。「メッキ部分も新車のように輝いているより、少し光りが鈍くなっている方がいいでしょう?」と愛車を前にニコニコ。まだまだ手を入れていきたい部分があるそうですが…「どうしてもお客様の車が優先になってね、自分のクルマは後回しで、なかなか手を付けられないんです」。そして何よりホンダS600を手に入れて一番よかったのは、父親と共有できる時間が、多く持てるようになったことだそうです。「ただ気が付くと、父親とホンダS600がいなくなることもよくあるんですよ」と、苦笑いをされていました。

取材・文: 平間裕司( Style Wiseman )

ホンダ S600

ホンダ S600

ホンダS500の登場に続き、1964年3月~1965年12月に生産された2シーターのスポーツカー。オートバイやF1参戦で培われた技術を元に、当時の日本車としては珍しいDOHCエンジンを搭載している。606ccという限られた排気量ながら、超高回転型エンジンで57馬力という高出力を達成していた。ボディータイプは、オープンとクーペの2種類があり、初めて当時の西ドイツに輸出された日本車としても有名である。現在もヴィンテージカーとして人気を博しており、ホンダ四輪車のルーツとなる1台。

1960~1969
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